Happy New Year !
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
それでは早速2013年のベストテンを。新作、旧作ともにスクリーンで見たものに限定。
まずは新作映画ベスト。先達に敬意を表し、生年順。
『パッション』(ブライアン・デ・パルマ)
『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』(ジム・ジャームッシュ)
『グランド・マスター』(ウォン・カーウァイ)
『3人のアンヌ』(ホン・サンス)
『ホーリー・モーターズ』(レオス・カラックス)
『ウルヴァリン: SAMURAI』(ジェームズ・マンゴールド)
『熱波』(ミゲル・ゴメス)
次に旧作映画ベスト。製作年度順。
『毒流』(ロイス・ウェバー、1916)
『二人のブルディ』(レフ・クレショフ、1929)
『不思議なヴィクトル氏』(ジャン・グレミヨン、1938)
『檜舞台』(豊田四郎、1946)
『大佛さまと子供たち』(清水宏、1952)
『ベルトルッチの分身』(ベルナルド・ベルトルッチ、1968)
『侵入』(ウーゴ・サンチャゴ、1969)
『あやつり糸の世界』(ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー、1973)
『キョート・マイ・マザーズ・プレイス』(大島渚、1991)
『YOUNG YAKUZA』(ジャン=ピエール・リモザン、2007)
そしてコントレ賞こと新人監督賞は『愛を語るときに、語らないこと』(モーリー・スルヤ)に決定!
よいお年を!
この一年を振り返ってみる。大学での講義は二年目に入り、現代映画論の他に映画史入門が加わり、さらにゼミを担当するようになった。批評家としての仕事は春にリュック・ムレについて二度目の講演をした他は、つい先日、清水宏論を書き上げたくらいか(来春「シネ砦」に掲載予定)。プライベートでは結婚し新居を構えたが、まさか自分がそうなるとは数年前までは考えもしなかった。人生何が起こるかわからないものだ。世の中はどんどん厭な方向へ向かっているが負けずに頑張って行きたい。
現代映画論
昨年に引き続き、東海大学文芸創作学科(湘南校舎)で「現代映画論」を講義します。毎回、テーマに関連する映画を一本見て、それから講義をします。
概要は昨年と同様なので、以下をご覧下さい。
http://hj3s-kzu.hatenablog.com/entry/20120926
授業スケジュールを若干変えたので以下に挙げておきます。
1. ガイダンス/アンドレ・バザンと作家政策
2. ヌーヴェル・ヴァーグ
3. ネオレアリズモ以後のイタリア映画
4. ソ連・東欧映画の新潮流
6. ダイレクト・シネマ/シネマ・ヴェリテ
7. ニュー・ジャーマン・シネマ
8. ポスト・ヌーヴェル・ヴァーグ
9. アメリカン・インディーズとニュー・ハリウッド
10. 台湾ニューウェイヴと中国第五世代
11. イラン・ニューシネマ
13. ポルトガル映画の新潮流
14. スペイン映画の新潮流
15. つねに「新しい波」
映画史入門
「現代映画論」に引き続き、東海大学文芸創作学科(湘南校舎)で「映画史入門」を講義します。毎回、テーマに関連する映画を一本見て、それから講義をします。以下、概要。
科目名:映画史入門
担当者:葛生 賢
水曜日 3-4時限
3限 13:25-14:55
4限 15:10-16:40
授業のテーマ:古典映画の発展と危機
1. 授業要旨または授業概要:
私たちが普段目にしている映像表現の源流は、19世紀末に誕生した映画にあります。映画はそこから今日に至るまで、約120年近い歴史を持っています。それはワンカットだけの記録映像として始まった映画が、次第に複雑な物語を語るメディアとして発達していったプロセスです。と同時に映画の持つ出来事を記録する力は、否応なく世界大戦を初めとする現実と関わりを持っていくことになります。そして1960年辺りを境に、映画は自らと現実との関わりについての反省を踏まえて「現代映画」と呼ばれるものへと発展していきます。
この講義では映画誕生から1960年までの約60年間の歴史を振り返ってみたいと思います。それによって、私たちが普段当たり前だと思っている映像表現を批判的に再考してみる視線を獲得することを目指します。
なお1960年以降の映画史については秋学期の「現代映画論」で扱います。
映画についての予備知識は必要としませんが、普段から各自、講義以外でも積極的に様々な時代や国の映画を見たり、それについての批評を読んだりすることが推奨されます。
2. 学習の到達目標:
1) 映画誕生以後の約60年間の映画史の流れを概観できること
2) 様々な映画運動の代表的な映画作家とその作品についての知識を習得すること
3) 映画の具体的な画面と音響を記述できること
4) 単なる感想文ではない、論理的な文章を書けるようになること
5) 映画を見て、映画史的な知見を踏まえつつ、その具体的な細部を手がかりに、説得力のある仕方で、自分なりに批評できること
3:授業スケジュール
1)ガイダンス
2)初期映画
3)古典的ハリウッド映画の発展(その1)
4)古典的ハリウッド映画の発展(その2)
6)ソヴィエト・モンタージュ
7)ドイツ表現主義
8)サウンド到来後の古典的ハリウッド映画
9)フランス詩的レアリスム
10)ドキュメンタリー映画の発展
11)イタリア・ネオレアリズモ
12)戦後ハリウッド映画(その1)
13)戦後ハリウッド映画(その2)
14)日本映画(その1)
15)日本映画(その2)
4. 教科書・参考書:
参考文献 映画史を学ぶクリティカル・ワーズ 村山匡一郎編 フィルムアート社 2,100円
告知です リュック・ムレ論ー乏しさの詩学(1)
Happy New Year !
よいお年を!
大晦日なので一年を振り返る。今年は「バカの壁」ということについて本当に色々な局面で考えさせられた年だった。学習回路の閉じた人間は実に害悪である。さて本業の方では近年稀にみるほど生産性の高い一年だったと思う。ムルナウとブレッソンという大巨匠についての長めの論考をほぼ同時に書き上げ、さらに同時期にリュック・ムレについての講演をした(来春その続編をアテネで行う予定)。さすがにこれはキツかった。しかもその直後に大学で映画についての講義を毎週行うことになった。これも毎週別のテーマで講演をやるようなものなので結構しんどかった。これによってわかったのは、今の日本社会で映画というのは実にマイナーな位置を占めているのだなということだ。映画を見て単位が取れるので楽だということで百人を超える学生が受講するが、本当に映画に関心がある者は実に少ない。また例年、予備審査の仕事をしている国際映画祭で、自分の担当した作品がコンペでグランプリを取ったのは我が事のように嬉しい出来事だった。しかし楽しいばかりのこの一年でもなかった。中でも最も悲しい出来事は敬愛する友人の安川奈緒さんが早世してしまったことである。詩壇だけでなく、映画批評にとっても大きな損失だと思う。炭鉱のカナリアのように感受性の鋭い人だった。と同時に酔うと実に豪快に笑う人だった。また親しい友人が行方知れずになってかれこれ八ヶ月近くになる。元気でいてほしい。日本社会がこれから良くなることはあり得ないが抵抗していきたい。