天国の晩餐/ルシア

a)『天国の晩餐』(トマス・グティエレス・アレア
b)『ルシア』(ウンベルト・ソラス)
a)大プランテーションを所有しているブルジョワが柵の外で勃発したキューバ革命から身を防ぐために、大邸宅(プランテーションが敷地内にある)に一族・奴隷とともに閉じこもり数十年間、一種の無人島生活をおくる。最後には荒れ果てた邸宅で一匹の猫を狩るために生き残った数人が猟銃を手に大捕物を演じたりする。後半、若い男女のラヴシーンが同時代のハリウッド映画に見られるようなソフトフォーカス・望遠レンズ・スローモーションで捉えられているところに批評的な距離が感じられてとても可笑しい。
b)三話構成のオムニバス。第一話はパゾリーニ風の演出で、独立戦争当時のキューバの上流社会での恋愛を描き、第二話はベルイマン風に1930年代の避暑地での一人の少女の革命家の青年との恋愛を、第三話はイタリア喜劇風というよりは70年代松竹喜劇風な演出で、革命後の農村で嫉妬に狂った粗暴な夫と自立したい妻とのドタバタを描く。この芸風の広さに何て節操のない人なんだろうと思ったのだった。個人的にはかなり通俗的で退屈な作品だったが、ただ第三話で、政府から読み書きを教えるために派遣された青年が、居眠りをしている夫の目の前で、人妻にこんな男からは逃げ出した方がよいとそそのかしているカットの切り返しで、寝ているはずの男が目を開けているというあたりの編集の呼吸には大いに笑わされた。「グアンタナメラ」の替え歌を狂言回しに使うアイデアも悪くなかった。