ペドロ・コスタに会う

hj3s-kzu2004-05-08

a)『無邪気な喜劇』(ラウル・ルイス
a) (きりんさんの御指摘により一部訂正してあります。コメント欄を参照のこと)
この作品の終映後、ジャンヌ・バリバールのティーチ・インがあったので、この映画に印象的な役で出ていたエディット・スコブについてまず聞いてみた。周知のように、彼女は『顔のない眼』(ジョルジュ・フランジュ)の「顔のない少女」役でデビューし*1、あの素晴らしい『溶岩の家』(ペドロ・コスタ)でも重要な役を演じているが、この作品においては怪奇映画的な記憶を呼び起こすイコンとして存在している。ジャンヌいわく「全くその通りだと思うわ。ところでこの映画で一番ヘンな(drole)のは彼女だと思わない?」。次に彼女の父上、エティエンヌ・バリバールの同僚であったマルクス主義哲学者、ルイ・アルチュセールについて何か興味深いエピソードはないかと尋ねると、「アルチュセールですって!」そこでアルフェリが「それについては一緒にたっぷり二時間かけてディナーを食べながら話したほうがいいね」とのこと。
昨日に引き続き、映画批評家の杉原賢彦氏にお会いし、一緒に建物を出ると、目の前のベンチにペドロ・コスタが座っていたので、彼と面識のある杉原氏に御紹介していただく。「この間の講義聴かせてもらいました。とってもグレイトでした」「ああ、君のことは覚えているよ」「マジっすか!?」ということで数分、立ち話を(id:hj3s-kzu:20040405)。
「今の映画どうだった」「面白かったっす。話はサッパリ分かりませんでしたが」ここで杉原氏が、さっきエディット・スコブについて質問していたのが私であることをコスタに伝えると、「彼女は私の映画に出るまで長い間、映画界から遠ざかっていたんだ」(確かにそれ以降、彼女はリヴェットやラウル・ルイスの映画に出演するようになっている)「そういえば、ヴェネチア映画祭に行って、ラウル・ルイスと一緒に飲んでいたら、ちょうどその時、黒澤明の訃報を聞いたな」とコスタ。「黒澤明はお好きなんですか」と杉原氏が尋ねると、「うーん」としかめっ面をしていた。でも『蜘蛛巣城』とかいいと思うんだけどと思いつつ、フランス題が分からないので、「『リア王』を翻案したのとか彼の最良の作品の一つだと思いますけど」と私が聞くと、「うーん、そうかなあ」とのこと。「ジャンヌの朗読会は来るの?」とコスタが聞くので、「もちろん!ライブも行きますよ!」と答えてからその場を後にした。その後、杉原氏とお茶をしたのだが、そういえば『蜘蛛巣城』は『リア王』じゃなくて、『マクベス』の翻案だったことに気づき、『リア王』は『乱』だったなぁ、確かにあれは良くないよなぁ、と思ったのだが後の祭りであった。
ところでこの特集を企画したピエール・アルフェリってジャック・デリダのご子息なんですってねぇ、ジョルジョ・アガンベンの『アウシュヴィッツの残りのもの』の仏訳とかもしているみたいだし、でも詩人・映像作家って言われても…ねぇ、フランスって国は…いやはや。まあジャック・ターナーの特集組んでくれるらしいんで許すけど。でもフランス人のシネフィルにしては珍しくナイスガイだった。

*1:と思いきや、実は『壁にぶつけた頭』([[ジョルジュ・フランジュ]])がデビュー作