日本映画批評のある種の傾向

a)『国境の町』(ボリス・バルネット
b)『諜報員』(ボリス・バルネット
アテネにバルネットを見に行ったら、超満員で驚く。まあバルネットだから当然といえば当然なのだが、普段の空席ぶりに馴れている身としては、ちょっとびっくり。アテネで普段やっている他の映画も面白いから皆見にきてね。上映後、おそらく初見なのだろうが、『諜報員』の脚本上の構成の欠陥を得意げにあげつらっている人たちがいて、よっぽど「馬鹿」と言ってやろうかと思った。その後、用事があったので映画美学校に立寄ると、事務局のK嬢が「映芸」の最新号を持っていたので借りて読み、そこに載っていたあんまりなベストテンに絶句する。『珈琲時光』(侯孝賢)、『ココロ、オドル』(黒沢清)、『のんきな姉さん』(七里圭)、『オーバードライヴ』(筒井武文)あたりは上位に入ってしかるべきだと思うが(ひょっとして皆見てない?)。井川さん、岡田さんの選とコメントには見識を感じたが、それ以外の人は…(それと高橋さんがストローブ=ユイレを初めて見た感想で「これなら何杯でもいけますよ」とあったのが面白く、爆笑しつつ共感。ただしコメントに垣間見える鋭い批評的認識が自作に向けられていないのは大いに問題)。前から感じていたことなのだが、やはりこの国にはもはや映画批評は不在か。などと無人のロビーで缶ビール片手にひとりぶつぶつ言っていると、奥の教室からDOGDAYS師匠御一行様がぞろぞろと出てくる。皆で飲みに行くと言うので参加。師匠は今期から自分のゼミを即戦力として使える映画批評家養成講座にすると宣言しておられた。ぜひともこの閉鎖的な日本の映画批評界に旋風を巻き起してほしいものだ。帰りがけに同志I嬢から電話あり。明日から二週間ほどブラジルに行くという。無事の帰国を切に願う。