恋する炭酸水

a)『オペレッタ狸御殿』(鈴木清順)★★★★
日仏に行ったらいきなり上映時間が三時間ほどずれていた。『ジャガー』(ジャン・ルーシュ)を見てから、Cくん、Sくんのと拙作を合わせて合同スタッフ試写を19時からやるつもりだったので大いに悩む。で、とりあえずDVテープだけ先に渡しておいて、本人不在のまま試写をしてもらい、『ジャガー』を見てから打ち上げだけ参加、という姑息なプランを思いつき早速Cくんにメールを打ち、京橋に行き事務局のIくんにテープを預ける。とりあえず三時間ほど『ジャガー』の上映まで時間が空いたので、八重洲ブックセンターで『新潮』など立ち読み(四方田犬彦のヨン様論とか)しているうちに、やはり自作のお披露目上映には立ち会うのが倫理的な態度ではないかと天使のささやきが聞こえてきたので、ルーシュを諦め、余った時間で清順の新作を見ることに。
予告編やら口コミやらで全く期待していなかった(有楽町の劇場では隣のイーストウッドには行列ができているのに、こっちはガラガラ)にも拘わらず、しかも妙に弛緩したファースト・カットの印象がその感をさらに深めたにも拘わらず、オダギリジョーチャン・ツィイーが出会い、ついに二人でこれまた薄っぺらな背景の前で高らかに愛の唄(「恋する炭酸水」作曲:大島ミチル)を歌い上げる瞬間に不覚にも涙してしまった(しかしあのスカスカで抽象的な空間もこの映画作家の手にかかるとどうしようもなく映画的空間になってしまうのは何故だろう)。もうチャン・ツィイーがくるくる回っているだけで幸せ、みたいな。あとはモブシーンがいかに駄目だろうが、毎度ながら作家がいかに観客を馬鹿にしきっていようが(あのカエルの鳴き声!)、そんなことは一切気にならなくなり、予め予想されたラストの大団円が予想された通りにやってくるや、そうこれでいいのだという肯定的な力に促されるようにして多幸感とともに劇場を後にしたのだった。
京橋に戻るとちょうど地下では研究科Nゼミがやっていて、NさんがSくんの作品に出演しているので、Nゼミが終わるのを待って、結局二回上映した。終了後、やるき茶屋へ。Nさんに感想を聞くと「三本ともそれぞれインチキくさい」とのこと。でも「インチキくささが足りてない」そうだ。よく分からん。でもI嬢のカットは気に入ってくれたみたいだ(私もここが一番好き)。久しぶりにNさんと朝まで呑む。後半はN節炸裂しまくり。Nさんと皆でよく呑んだ数年前のことを思い出した。この人基本的にあまり変わっていない。店じまい後、ソドム君の仕事先に皆で遊びに行く。少し話をして別れた後、帰ったふりをしてこっそりと(何度も)Nさんと彼の様子を伺いにいくが、全くスキがなく臨戦体制でネタを用意しているのにはさすが元芸人と感心。