a)『ミュンヘン』(スティーヴン・スピルバーグ)★★★★
『ミュンヘン』への註。ゴダールとスピルバーグ。
そこ(引用者註:『ヒア&ゼア・こことよそ』のパレスチナのパート)に描きだされた戦士たちの多くは、「黒い九月」事件で、「帝国主義」的なイスラエル軍ではなく、同じアラブ人のヨルダン国王の軍隊によって殺戮されてしまった人々であり、「そこ」には記憶による追悼の儀式が色濃く影を落としている。*1
1960年代後半、ヨルダンに拠点を置いていたパレスチナ解放機構(PLO)の過激な行動に手を焼いた同国のフセイン国王は、1970年9月にPLOの武力追放を決定。ヨルダン内戦が勃発する。
黒い九月事件とも呼ばれるこの内戦で、PLOは多くのメンバーを殺され、追われる形でレバノンのベイルートに拠点を移すことになった。PLOの衝撃は大きく、フセイン国王の行為を裏切りとして強く反発した。
その後、レバノンで活動を始めたPLOの最大派閥ファタハは、対イスラエル闘争の行き詰まりから、過激な活動を行うための秘密テロ組織を結成した。これが黒い九月、ブラックセプテンバーである。
黒い九月の存在は、ミュンヘンオリンピック事件で一気に知れ渡り、イスラエル選手とコーチが殺害された事件はイスラエルに大きな衝撃を与えた。イスラエルの情報機関、モサドはこの報復として黒い九月関係者の多くを暗殺している。*2
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