a)『萬世流芳』(卜萬蒼/朱石麟/馬徐維邦/張善?/楊小仲)★★★★
前回、超満員で入れなかったので、長蛇の列を覚悟して一時間前に恐る恐る行くと、意外や意外、八割程度の入りだった。李香蘭が出ている満映作品という程度の予備知識しかなく、それほど期待もしていなかったのだが、これが実に素晴らしい作品でやはり映画の価値は実際に見てみないとわからないと再確認。阿片戦争についての物語であるこの映画で、のっけから明らかに付け鼻をした中国人がイギリス人夫婦を演じていて仰け反りそうになるが(しかも中国語で会話していて、なぜか「国王陛下万歳」と乾杯する時だけ英語)、物語の冒頭と最後に二度、思ってもみないかたちで画面に登場するハンカチや主人公を慕う女性によって歌われる「阿片根絶の歌」(!)など魅力的な細部に満ちている(女優の撮り方も素晴らしい)。李香蘭目当ての観客が多かったと思うのだが彼女の登場は後半部からで、むしろそれ以前の若き日の林則徐を描いた前半部が特に素晴らしい(高官に出世してしまうと、ややそれまでの人間味がなくなってしまうのだ)。とはいえ終盤の彼を慕うひとりの女性の死から、失意の林則徐がその墓を訪れるまでの流れには(イデオロギー的には抵抗を感じつつも)何度も泣きそうになってしまった。『阿片戦争』(マキノ正博)に一歩もひけをとらないこんな傑作を年金生活者たちだけに独占させておくのはもったいない。必見。

で、帰りに地元の書店で、おでこと白いビキニが魅力的な中川翔子(こんなイイ女だったなんて!)の表紙に惹かれて「映画秘宝」最新号を手にとると、ソクーロフ鈴木邦男の対談とか、荒木一郎のインタビューとかが面白く、『異常性愛記録ハレンチ』(石井輝男)についての記事も読みたかったのだが、すぐそばで若い女性が立ち読みしていたので今回それはパスし、荒木一郎の話(当時、池玲子杉本美樹と芹明香を抱えた事務所の社長だったとは!凄すぎる)を読んでいるうちひし美ゆり子の初主演にして初脱ぎ作品だという『鏡の中の野心』が見たくなり(eigahitokwさんも褒めてたしねっ!)、「ぴあ」を調べると今日が最終日でしかも上映開始まであと30分なのだった(地元の駅からはどう考えても間に合わない)。ガビーン。