a)『野良猫ロック・ワイルドジャンボ』(藤田敏八)★★
b)『馬泥棒のバラード』(エイブラハム・ポロンスキー)★★★★
c)『ジョニー・オクロック』(ロバート・ロッセン)★★★★
誰が何と言おうが『ジョニー・オクロック』が傑作であることは疑い得ない。たとえ他のロッセン作品にみられるトリッキーなショット(しかしこれはロッセン特有というよりは撮影のオイゲン・シュフタンに帰すべきものではなかろうか?)がなくとも。この作品では、ワンシーン内で二人ないし三人の登場人物の力関係が次々に推移していくのだが、ロッセンは、どの瞬間にどのように立ったり座ったりするのかという彼らの位置関係を提示することで、それを視覚的に表現している。彼らは文字通りシーソーゲームのように画面内での最も高い位置を奪い合うのだ。この演出の妙味を理解せずに、この作品の素晴らしさを味わうことはできない。このすぐ後に傑作『ボディ・アンド・ソウル』を撮るロッセンが、処女作においてすでに卓越した技量を持っていたことを示す作品。