a)『パッション』(エルンスト・ルビッチ)◎
歴史劇のことを英語で「costume play」というが(日本語の「コスプレ」の使い方は間違い)、まさにこの映画は「衣装の劇」と呼ぶに相応しい。ポーラ・ネグリの「お針子」(まさにファッションに関わる)が、男を取り替えながら権力の階梯を昇っていくに従い、衣装を取り替えていく。そして別のコースを辿りつつ彼女の元恋人も。だから、豪奢な衣装を剥がされ、シャツだけになった彼女を逃がそうと、彼があの事件の時の外套を着て監獄に現れるのは感動的だ。しかしそれも失敗に終わり、ギロチンにかけられ胴体から切り離された彼女の首は衣装を身につけることを永遠に許されない。