映画芸術入門

ボードウェル&トンプソンの『フィルム・アート』日本語版がついに発売された。この本はアメリカの大学で映画学教科書の定番となっているもので、私も以前、辞書を引き引き原書で読んだ。読後の感想としては「もっと早くこの本に出会っていれば、苦労しないで済んだのに!」という身も蓋もないものだったが、そのくらい素晴らしい書物だ。映画学教科書といっても、単に研究者向けではなく、映画を撮ったり、批評を書いたりする人にとっても実に役に立つ内容になっている。こんな良書がたったの五千円弱で買えるなんて犯罪的(だって原書はその倍の値段するのだ!)。悔しいので買ってしまった。実際に手に取ってみると、オリジナルより縦長だが、感触や重さはほとんど同じ。また原書はほぼオールカラーだが、こちらの方は価格を抑えるためか、カラー図版は最初の数ページのみ(ただモノクロでも内容を理解する分には全く差し支えない)。帯の惹句の「この一冊で、きっと映画の見かたが変わる!」というのはダテではない。映画の入門書はこれ一冊で十分。必読。
なお、この翻訳は第7版を底本にしているが、原著は去年の暮れに第8版が出た。訳者あとがきによれば、「基本的な説明は版が改訂されてもほとんど変わっていない」とのこと。
次はぜひ『映画史』か『古典的ハリウッド映画』の翻訳をお願いします!

フィルム・アート -映画芸術入門-

フィルム・アート -映画芸術入門-