TOKYO FILMeX2007 その2

a)『撤退』(アモス・ギタイ)△
昨日見た短編のあまりの酷さに、この作家にはもう見切りをつけようと思ったほどだが、やはりこの作品に出てくる充実したロングテイクに見られるような彼の演出手腕にはやはり一目置かざるを得ない。とはいえ最初の方でビノシュの父の屍体の側で朗々と歌う黒人女歌手に向けられるキャメラにはやはり胡散臭さが付きまとうし、ビノシュを入植地に送り届ける男の役をギタイ本人が演じているのだが、彼の映画を見慣れている者にはその独特な声で彼だとすぐに判別が着くとはいえ、その登場シーンでは逆光の車内で顔を薄暗く見せ、その後の車内でビノシュと会話するシーンでもギタイなめでビノシュをとらえたショットなので、一貫して当のギタイ本人はわざとピンぼけに撮られていたにもかかわらず、フレーム外にいるイスラエル軍兵士に向かって、「決め台詞」を言う瞬間に、ここぞとばかりにギタイ本人にピン送りがされるという演出を見てしまうと、やはりこの映画作家は信用できないなあと思うのだった(このショットはフレーム外の兵士に語りかけていると同時に、観客に直接語りかけているようにみえる)。