2月のオススメ、あるいは基礎体力強化月間

ここのところ忙しかったので、ついつい「今月のオススメ」をさぼってしまったが、別にこちらがオススメするまでもなく、都内では同時にルノワール、マキノ、溝口&成瀬が上映されているんだから、それらを可能な限り全部見りゃいいじゃんと思い、そのままスルーするつもりだったのだが、友人のmixi(私は読むだけ)のコメント欄で甘ったれたことを抜かす別の友人のコメントをたまたま目にしてしまい、ガックリきてしまったのだった。
カントの『啓蒙とは何か』を引くまでもなく、啓蒙の最終目的とは「自分の頭で考えられるようにすること」であり、こちらが柄にもなく映画におけるある種の「啓蒙活動」を続けてきたのもそのためなのだが、その結果がこれとは…(ハァ)。
こうなると自分の活動方針を見直さざるを得ないわけで、二十代の自称「シネフィル」諸君に言いたいことは、やはり「今、劇場にかかっているものを見ているだけでは絶対駄目」ということに尽きる。カノンだのアナーキーだのといった二者択一はホントにどーでもいい話で、流行ものだけ追いかけていると、則文はほとんど見ているけどエイゼンシュテインは一本も見てないとか、成瀬はほとんど見ているけどアルドリッチは一本も見てないとか(あくまでも例え話)、まあそれで本人が幸せならそれでもいいんだが、それは「映画」について真剣に考えようとしている人間の態度としてはやっぱりヘンだろ!と思うのであった。
まあ怒ってばかりいるのも何なので、じゃあどうしたらいいのか考えてみると、やはり「映画史」の最低限の基礎知識は必要なんではないかと。まあどこまでが「最低限」なのかの線引きが難しいし、日本語で読めるまともな「映画史」の本が市場に出回っていないので、なかなか難しい問題ではあるが、とりあえずボードウェル&トンプソンの『フィルム・アート』とモナコの『映画の教科書』の映画史のパートは読むべきだし、余力があればサドゥールの『世界映画史』(一巻本の方・絶版)やボードウェル&トンプソンの『Film History』(邦訳なし・ただし一冊選ぶならこれ)を時々繙けばいいと思う。そうすれば自分は何を見ていないかが分かるし、必然的に見るべきものも他人に聞かなくても決まってくるだろう。なお新書版で出ている四方田、北野、中条各氏らによる各国別の映画史もなかなかよい。
ちなみに上述の三つの特集上映以外だと新文芸坐の時代劇特集が山中、工藤、マキノ&伊藤、加藤、中川、三隅らの二本立てを組んでくれていてありがたいと最後にそっと付け加えておく。
私も見ていない映画は星の数ほどあるが、絶えずその欠落を忘れないように生きてます。

フィルム・アート -映画芸術入門-

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映画の教科書―どのように映画を読むか

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世界映画史 1

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Film History: An Introduction

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日本映画史100年 (集英社新書)

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ハリウッド100年史講義―夢の工場から夢の王国へ (平凡社新書)

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フランス映画史の誘惑 (集英社新書)

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永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編 (光文社古典新訳文庫)

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