團菊祭五月大歌舞伎の夜の部を見に歌舞伎座へ。演目は「白浪五人男」と「三升猿曲舞」。「白浪五人男」は、菊五郎団十郎左団次時蔵三津五郎という豪華キャスティングで、菊五郎が弁天小僧。通しで見ることで、この戯曲のエンターテイメント性がよく伝わり、最後まで面白く見られた(原作は黙阿弥)。浜松屋の場ももちろん良いのだが(正体の露見した後の菊五郎左団次のやりとりはまるで西部劇や任侠映画の男たちのそれである)、土手に並んだ捕り手たちをバックに、「志ら浪」と大きく書かれた唐傘を肩に載せ、ずらりと勢揃いした紫の着物姿の五人の後ろ姿がめちゃめちゃカッコ良く痺れた。前半でも、上がり舞台の下からパアッと水色の幕が引かれると、薄暗い崖下の空間が現れるという趣向が鮮やかだったが(その中央でうずくまる梅枝の千寿姫の赤い衣装の鮮やかさ!)、クライマックスでも、極楽寺の屋根の上で派手なアクロバットの大立ち回りの後、追いつめられた菊五郎がそこで自害すると、さらにその下階の団十郎のいる空間が現れ(まるでアニメの変形ロボのように)、その空間がさらに上昇し、ラストの富十郎の登場で幕となるという三層構造の仕掛けは面白い。「三升猿曲舞」は十分ほどの長唄舞踊だが、松緑とそれを囲む四人のアンサンブルが美しかった。