a)『ヨーロッパ2005年、10月27日』(ストローブ=ユイレ)◎
b)『アルテミスの膝』(ストローブ=ユイレ)◎
c)『ジャン・ブリカールの道程』(ストローブ=ユイレ)◎
d)『JAL空の旅シリーズ ヨーロッパ モデルコース』(亀井文夫)◎
e)『のり平 アメリカ紀行』(亀井文夫/小島義史)◎
f)『のり平 トラベル・マナー』(亀井文夫/倉益琢磨)◎
『ヨーロッパ2005年』の途中から数分遅れて入場。場内真っ暗だが、ほぼ満席であることはわかる。空席を見つけたが、座っている人に迷惑だし、こんな状態で座っても前の席の人の頭でフレームが切れるのもいやなので、立ち見をすることに(ちなみにストローブ=ユイレの映画でいつも居眠りしてしまう人には立ち見を勧める。絶対寝ないから。まあ『エンペドクレスの死』のように二時間以上あるものは立っているのも辛いかもしれんが)。
『アルテミスの膝』で語られている「彼女」がアルテミスであるとともにユイレのことでもあると気づいた瞬間に、あの背を向けている男の言葉が現在のストローブと重なり、冒頭のマーラーの音楽(こういう叙情的な音楽の使い方は今までのストローブ=ユイレの映画にはなかった)と黒画面がまさに「喪」の印象を与えることも含め(しかも「監督:ジャン=マリー・ストローブ」という単独クレジット!)これはまさにユイレ追悼の映画なのだと確信し、それを噛みしめつつ、一番後ろで涙を流しながら立って見た。
『ジャン・ブリカールの道程』はそもそもフランス語の聞き取りが得意でない上にボイスオーバーも若干こもった音なので最初見た時は内容までは踏み込めなかったのだが、やっぱ日本語字幕があるっていいわ。それにしても素晴らしいボート上からのトラヴェリング。最後に水鳥が飛び立つところはニコラス・レイを想起。
亀井文夫の三本はいずれもJALのPR映画なのだが、これが実に面白い。特に『ヨーロッパ モデルコース』なんかはアナウンサーの人の真面目な語りに、海外旅行通らしいオジサンのあまりにもテキトーなコメントがいい感じの間合いで入ってくるので、爆笑させられることしきり。冒頭に赤い服の加賀まりこ(超可愛い)がいきなり予備知識なしに登場したのでハッとさせられた。
残りの二本のおかげで被写体としての三木のり平の素晴らしさに開眼。私らの世代だと桃屋のCMの印象が強すぎるんだが、特に『アメリカ紀行』の「ひげのない三木のり平」はいいですなー。