a)『サインはV』(竹林進)○
b)『女囚701号 さそり』(伊藤俊也)○
『サインはV』は「テレビで爆発的人気を博したドラマを再編集した作品」とチラシに書かれていたので、全く期待しないで臨んだのだが、いきなり凝ったライティングのタイトルバックが始まったので思わず身を乗り出す。というか堂々たるシネスコの画面なので「再編集」ではありえないことは一目瞭然なのだが、それはさておき、この作品の古典的で端正な画面連鎖に感銘を受け(1970年の作品なのに!)、ところどころ漫画原作ゆえのあんまりな展開も挟みつつ、だがそれをスタッフ・キャストが真剣にやっている様が素晴らしく、また中山仁の顔は実に映画の顔をしていて良いのだが、中でも素晴らしいのは混血児役の范文雀で、最初に登場するシーンで土手の斜面の木陰に腰掛けてギターをつま弾きながら、頭上を飛ぶ米軍機を睨んで「アメリカ…アメリカ…」と呟くところから、もう彼女にメロメロになってしまうのだが、最後、孤独に死の床にある彼女の傍のテーブルにバレーボールが載せてあるのを見ると、こちらとしてはこのシーンを締めくくるショットが予想できてしまい、でも実際にそんなショットが来たら泣けてしまうと思いつつ見ていると、本当にその通りの画面が来てしまったので、思わず滅多にしない感情移入をしてしまい、もらい泣きしそうになったのを堪えたのだが、それにしてもこのような作品を撮った竹林進とは一体何者であろうかと自らの無知を恥じつつ調べてみると、岡本喜八や谷口千吉の助監督をされていた方とのことで、テレビ版の『サインはV』の他に『太陽にほえろ』(第一話から)も手がけられていて、映画はこれ一本のみというのが実に惜しまれる才能なのだった。