TOKYO FILMeX 2009 その3

a)『ペルシャ猫を誰も知らない』(バフマン・ゴバディ)○
b)『エクスプローディング・ガール』(ブラッドリー・ラスト・グレイ)△
バンドのメンバーを探しているミュージシャンのカップルを案内役に、イランのアンダーグラウンド音楽シーンを紹介するフィクション仕立ての作品。本映画祭中、最も感銘を受けた。アングラ音楽といっても、私たちが普通、耳にする欧米のロックやヒップホップだったりして意外だったのだが(しかも作曲・演奏のスキルは欧米のものと遜色がない)、これらがイランでは政治的弾圧を受けていて、彼らは当局に見つからないよう、音漏れのしない地下室などで練習やライブをしている。演奏が始まるとなぜか、MTV風の映像になって、この手のPVの作りって万国共通なんだなあとちょっと残念だったし、ラストも悲劇的な結末に終って欲しくなかったとも思うのだが、にもかかわらず、音楽に対する情熱がそのまま政治的な抵抗たりえているさまに思わず涙。音楽好き同士で『NME』(イギリスの老舗ロック雑誌)の最新号を回し読みするちょっとした描写にはニヤリとさせられた。
『エクスプローディング・ガール』は、ラストの若い男女の組み合わされた手を正面から捉えたショットが、特にエロティックな場面でもないのに、それだけで実にエロティックだなあと思った。