TOKYO FILMeX 2009 その4

a)『フェルショー家の長男』(ジャン=ピエール・メルヴィル)◎
b)『不良番長 どぶ鼠作戦』(野田幸男)△
c)『札幌・横浜・名古屋・雄琴・博多 トルコ渡り鳥』(関本郁夫)△
『フェルショー家の長男』は、作品中盤で不意に、貧民街を捉えたドキュメンタリー的なざらついた質感の映像が挿入され、今、キャメラの前にある建物がフランク・シナトラの生家であることが、ナレーションで告げられる。それを見るものは、『マンハッタンの二人の男』がそうであったように、この映画がシャルル・ヴァネルとそれに付き従うジャン=ピエール・ベルモンドのアメリカ南部への逃避行の物語であると同時に、それをプレテクスト(口実)とした、メルヴィル自身のアメリカへの憧憬に満ちたプライヴェートな旅の記録であることに気づかされる。