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未来の巨匠たち その2

a)『a perfect pain』『FRAGMENTS Tokyo murder case』(加藤直輝)×
b)『Nice View』『りんごの皮がむけるまで』(加藤直輝)×
『a perfect pain』は最初の三十分はいらないと思った。屋上の暴力シーンには確かに見るべきものがあるかも知れないが、ゲーム的というか、被害者の「痛み」を知らない暴力描写のインフレーションにはひたすらうんざりさせられた。この作家の暴力には思想が欠けている。「痛み」についての感覚が麻痺しているのではなかろうか。ショットという概念の欠如した『a perfect pain』とはうってかわり、「ゴダール・ギア装着後」といった趣の(もちろんこの「ゴダール」をブレッソンなり何なりに変えることも可能である)『FRAGMENTS Tokyo murder case』はファーストショットからして見事なものだが、外見を美しく着飾っても、やはり思想の欠如までは覆い隠せない。『Nice View』も同様。これでこの作家のフィクション作品は全て見ることができた。人気のない夜道を歩いている時、いきなり物陰から人が飛び出してきたら誰だってびっくりするだろうし、目の前の地面に惨たらしく叩き殺された動物の屍体が転がっていたら誰だって厭な気分になるだろう。そしてそのようにして人を驚かせたり、厭な気分にさせたりして、こっそり喜んでいるような人間も中にはいるだろう。結局のところ、この作家がやっているのはこうしたことと大差ないのではないかと個人的には思っている。フレームの外からいきなり大型テレビが降って来たら誰だってびっくりするだろうし、それがベビーカーの上に落ちて中にいた可愛らしい赤ん坊が惨たらしく死んだら誰だって厭な気持ちになるだろう。効果的に機能すれば映画で何をやっても構わないという人間には深い軽蔑しか私は感じない。そしてこれらの作品に対してはやはりリヴェットの「卑劣さについて」(セルジュ・ダネー『不屈の精神』所収)を対置するしかないだろう。
リンゴの皮がむけるまで http://d.hatena.ne.jp/hj3s-kzu/20060728
A Bao A Qu http://d.hatena.ne.jp/hj3s-kzu/20070519
渚にて(『新訳:今昔物語』の一編) http://d.hatena.ne.jp/hj3s-kzu/20070526

不屈の精神

不屈の精神