Happy New Year !

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あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
それでは早速2018年のベストテンを。例年だと新作、旧作ともにスクリーンで見たものに限定していたのだが、今年からルールを変更してネット配信で見たものも含めることに。理由はオーソン・ウェルズの「新作」が今のところNetflixでの配信のみであることと、近年の海外の配信サイトの充実ぶり(MUBIだけでなく、残念ながら終了してしまったFilmStruckなど)には目を見張るものがあり、高い入場料を払って「名画座」で「デジタル上映」の旧作で見るくらいなら、これらの配信サイトの作品を自宅のスクリーンで見た方が質量ともに遥かに満足のゆく鑑賞体験が得られるので。選ぶ前は特に旧作ベストをネット配信で見たものが大半を占めることが予想されたが、スクリーンで見たものから先に選んでいった結果、意外にもそれだけで十分な数の作品がリストアップできたので、今回は入っていない。ただこうした趨勢はもはや押しとどめることはできないだろう。なおFilmStruck終了の後を受けて、今春に開始されるというCriterion Channelに個人的には期待している。
今年も何人もの映画人がこの世を去ったが、1960年代以降のイタリア映画の刷新を担ったエルマンノ・オルミベルナルド・ベルトルッチの二人の死には衝撃を受けた。

 さて新作映画ベスト。先達に敬意を表し、生年順。
風の向こうへ』(オーソン・ウェルズ
15時17分、パリ行き』(クリント・イーストウッド
『イメージの本』(ジャン=リュック・ゴダール
『良き隣人の変節』(ペーター・ネストラー
レディ・プレイヤー1』(スティーヴン・スピルバーグ
つかのまの愛人』(フィリップ・ガレル
『川沿いのホテル』(ホン・サンス
『ロスト・シティZ/失われた黄金都市』(ジェームズ・ グレイ)
犬ヶ島』(ウェス・アンダーソン
『ア・ゴースト・ストーリー』(デヴィッド・ロウリー)
(次点)
ゾンからのメッセージ』(鈴木卓爾
蝶の眠り』(チョン・ジェウン


 さらにベスト短編。
『湖の人びと』(ジャン=マリー・ストローブ
『いかにしてフェルナンドはポルトガルを救ったか』(ウジェーヌ・グリーン

 次に旧作映画ベスト。製作年度順。
忠臣蔵』(牧野省三、1910-1917)
『囁きの合唱』(セシル・B・デミル、1918)
『母というだけ』(アルフ・シェーベルイ、1949)
『牢獄』(イングマール・ベルイマン、1949)
『ビッグ・リーガー』(ロバート・アルドリッチ、1953)
『怪盗ルパン』(ジャック・ベッケル、1957)
ギリシャについて』(ペーター・ネストラー 、1966)
『現像液』(フィリップ・ガレル、1968)
『紅い太陽』(ルドルフ・トーメ、1970)
『期待』(アミール・ナデリ、1974)


コントレ賞こと新人監督賞は、今回は該当者なしも考えたが、年末に見た『アリー/スター誕生』が意外にも悪くなかったので、ブラッドリー・クーパーとする。

(追記)アラン・ロブ=グリエの特集上映は、数年前に英盤DVDボックスが出た時に全て見たので、行かなかった。

よいお年を!

晦日なので一年を振り返る。今年は前半に突如、一時的な失語状態(意識ははっきりしているのに声が出ない)に陥り、数年前の交通事故のこともあり、検査のため緊急入院したが、結局、どこも異常はなく、原因不明のまま、翌日退院させられた(笑)というのが一番大きな出来事。おそらく過労のためと思われ、そのため日の出とともに寝るというそれまでの夜型生活を改め、朝型生活を数週間続けたが、結局、元の生活に戻った。映画批評家としては、渋谷で岡田さんと堀くんを偲び、広島でガレルの初期作について語るというトークの仕事を二本こなした。子育てと仕事で劇場に映画を見に行く時間は確実に削られたが、その分、ネット配信の恩恵を受けた。特にFilmStruckにはかなりお世話になったので、終了してしまったことが返す返すも残念だ。来年はもう少し読書や執筆のための時間を確保したい。

現代映画論

概要は例年通りです。

http://hj3s-kzu.hatenablog.com/entry/20120926

教室は2E-101です。

授業スケジュールを若干変えたので以下に挙げておきます。
1. ガイダンス/アンドレ・バザンと作家政策
2. ヌーヴェル・ヴァーグ
3. ネオレアリズモ以後のイタリア映画
4. ソ連・東欧映画の新潮流
5. 政治的モダニズム第三世界の映画
6. ダイレクト・シネマ/シネマ・ヴェリテ
7. ニュー・ジャーマン・シネマ
8. ポスト・ヌーヴェル・ヴァーグ
9. アメリカン・インディーズとニュー・ハリウッド
10. 台湾ニューウェイヴと中国第五世代
11. イラン・ニューシネマ
12. ソ連崩壊後のロシア映画
13. ポルトガル映画の新潮流
14. スペイン映画の新潮流

映画史入門

今年も東海大学文芸創作科(湘南校舎)で「映画史入門」を講義します。授業時間、スケジュールに若干変更があるので、改めて概要を掲載します。毎回、テーマに関連する映画を一本見てから講義をします。

教室は2E-101。

【基本事項】
授業科目名:映画史入門
担当教員:葛生 賢
曜日 時限:水-3(13:25-15:05)、水-4(15:20-17:10)
テーマ:古典映画の発展と危機

【授業要旨または授業概要】
私たちが普段目にしている映像表現の源流は、19世紀末に誕生した映画にある。映画はそこから今日に至るまで、約120年近い歴史を持っている。それはワンカットだけの記録映像として始まった映画が、次第に複雑な物語を語るメディアとして発達していったプロセスである。と同時に映画の持つ出来事を記録する力は、否応なく世界大戦を初めとする現実と関わりを持っていくことになる。そして1960年辺りを境に、映画は自らと現実との関わりについての反省を踏まえて「現代映画」と呼ばれるものへと発展していく。

この講義では映画誕生から1960年までの約60年間の歴史を振り返る。それによって、私たちが普段当たり前だと思っている映像表現を批判的に再考してみる視線を獲得することを目指す。

なお1960年以降の映画史については秋学期の「現代映画論」で扱う。

【学修の到達目標】
1) 映画誕生以後の約60年間の映画史の流れを概観できること
2) 様々な映画運動の代表的な映画作家とその作品についての知識を習得すること
3) 映画の具体的な画面と音響を記述できること
4) 単なる感想文ではない、論理的な文章を書けるようになること
5) 映画を見て、映画史的な知見を踏まえつつ、その具体的な細部を手がかりに、説得力のある仕方で、自分なりに批評できること

【授業計画】
◆スケジュール
1. ガイダンス
2. 初期映画
3. 古典的ハリウッド映画の発展(その1)
4. 古典的ハリウッド映画の発展(その2)
5. フランス印象主義シュールレアリスム
6. ソヴィエト・モンタージュ
7. ドイツ表現主義
8. サウンド到来後の古典的ハリウッド映画
9. フランス詩的レアリスム
10. ドキュメンタリー映画の発展
11. イタリア・ネオレアリズモ
12. 戦後ハリウッド映画(その1)
13. 戦後ハリウッド映画(その2)
14. 日本映画

【教科書・参考書】
渡辺進也+フィルムアート社(編)『映画を撮った35の言葉たち』フィルムアート社

Happy New Year !

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あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

それでは早速2017年のベストテンを。新作、旧作ともにスクリーンで見たものに限定。 

その前に特別賞を。

 『夏の娘たち ひめごと』(堀禎一

 ここ数年来、次々と巨匠たちが亡くなっていったが、これからの日本映画を担うエースがまさか早逝してしまうとは思いもよらなかった。彼の死こそ2017年最大の映画的事件であり、ベストテンのような呑気な年中行事など中止しようかとも思ったが、そんな大げさなと彼なら一笑に付したに違いないので、涼しい顔で今年も続けることにする。

 さて新作映画ベスト。先達に敬意を表し、生年順。

 『エクス・リブリス ― ニューヨーク公共図書館』(フレデリック・ワイズマン

アウトレイジ 最終章』(北野武

『パターソン』(ジム・ジャームッシュ

希望のかなた』(アキ・カウリスマキ

ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』(ティム・バートン

『LOGAN ローガン』(ジェームズ・マンゴールド

『セールスマン』(アスガー・ファルハディ)

『ラビング 愛という名前のふたり』(ジェフ・ニコルズ

ゲット・アウト』(ジョーダン・ピール

『殺人者マルリナ』(モーリー・スリヤ)

 さらにベスト短編。

『ハンネと革命記念日』(ギョーム・ブラック)

 次に旧作映画ベスト。製作年度順。

 『ツバメ号シジュウカラ号』(アンドレ・アントワーヌ、1920)

『人生の乞食』(ウィリアム・A・ウェルマン、1928)

『ふしだらな女』(アルフレッド・ヒッチコック、1928)

『生まれながらの悪女』(ニコラス・レイ、1950)

『カドリーユ』(ジャック・リヴェット、1950)

ある夏の記録』(ジャン・ルーシュエドガール・ モラン、1961)

『天井』(ヴェラ・ヒティロヴァ、1963)

『マーティン/呪われた吸血少年』(ジョージ・A・ロメロ、1978)

『四部の提案』(ジャン=マリー・ストローブダニエル・ユイレ、1985)

セルジュ・ダネージャン=リュック・ゴダールの対話』(ジャン=リュック・ゴダール、1988)

 コントレ賞こと新人監督賞は『汚れたダイヤモンド』のアルチュール・アラリに決定!

 

よいお年を!

大晦日なので一年を振り返る。映画批評家としては、年末に出た『映画を撮った35の言葉たち』(フィルムアート社)に参加した。このうち私はルビッチ、マキノ、ストローブ=ユイレを担当した(しかしすごい組み合わせだ)。原稿依頼を受けたのがちょうど映画祭シーズンの真っ最中で、映画を見る合間を縫っての慌ただしい仕事だったが、我ながらなかなかの出来だったのではないかと思う(どうぞ手にとってご確認あれ)。また今年は大学時代からの友人である堀禎一を失ってしまった悲しい年でもあったが、未見の方たちへのイントロダクションになればとラジオ関西「シネマキネマ」の一回分の放送時間を丸々いただいて彼の作品について語らせてもらった(吉野Dに感謝)。去年、予告した批評集は、私の遅筆のせいで出せる見通しが一向につかない(笑)。私事では子供が生まれた。まさか自分が父親になる日が来るとは考えてもいなかったが、目下、育児と仕事と映画の時間配分をめぐって妻とせめぎ合う日々である。それでは皆さん、よいお年を。

 

映画を撮った35の言葉たち

映画を撮った35の言葉たち

  • 作者: 得地直美,伊藤洋司,三浦哲哉,荻野洋一,橋本一径,安井豊作,赤坂太輔,井上正昭,木原圭翔,葛生賢,隈元博樹,黒岩幹子,須藤健太郎,角井誠,長門洋平,南波克行,降矢聡,結城秀勇,渡辺進也,フィルムアート社
  • 出版社/メーカー: フィルムアート社
  • 発売日: 2017/12/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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