夕陽に向って走れ

hj3s-kzu2004-03-02

a)『夕陽に向って走れ』(エイブラハム・ポロンスキー
a)この傑作には言葉は無力だ。人々の話題の中心でありながら、結局画面に姿を見せないアメリカ合衆国大統領と、人々のもう一方の話題の中心でありつつ絶えず私たちの視線に晒されている物語の主人公ウィリー・ボーイとを比較して、そこから「持つものと持たざるもの」という主題を引き出すことは可能だろう。あるいはウィリー・ボーイとキャサリン・ロス(かわいい!)のカップルと『冷たい血』の鈴木一真遠山景織子のカップルを(そしてロバート・レッドフォード石橋凌を)比較して、そこにエイブラハム・ポロンスキーから青山真治へと連なる映画史的系譜学をもっともらしく語ることもできるかもしれない。でもいくら言葉を並べてもこの60年代アメリカ映画の陥没点とも言えるこの作品を語ったことにはならないような気がするので止しておく。