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東京国際映画祭2009 その5

a)『小さな山のまわりで』(ジャック・リヴェット)△
b)『玄海灘は知っている』(キム・ギヨン)◎
c)『テッラ・マードレ―母なる大地』(エルマンノ・オルミ)×
またまた寝坊。エスカレーター・ダッシュ。よって『小さな山のまわりで』の冒頭を見逃す。しかも自分の席が列の真ん中あたりで、観賞中の皆さんの視界を遮ってしまうのも申し訳ないので、劇場の最上段まで上がっていき、その隅っこで壁にもたれながらひっそり立ち見。以前のTIFFだったら場内の係員が飛んできて席に着くように注意されたところだが、今年は人件費削減なのだろうか、文句を言ってくる係員もなし。で待望のリヴェットの新作だが、あまりにも薄味で拍子抜けした。ただ終盤、テント小屋の中でジェーン・バーキンが目の前に掲げた新聞紙をサーカス団員が鋭い音を立てる鞭で次々と半分に切り裂いていく危険極まりない長回しのショットはこの作品の中で最も充実したもので、さすがリヴェットと感心。やはりせっかくサーカスを題材に選んでいるのだから、90分と言わず、もっとだらだらと曲芸を盛り込んだ180分くらいのものが見たかった。

『玄海灘は知っている』は、冒頭の船上シーンは一体何だったんだろうと見終わってからしばらく考えて、あ、そうか、あの生き残りが主人公ということかとようやく合点がいった。わかりにくいよ。見ながら『兵隊やくざ』(増村)を想起したが、それはさておき、キム・ギヨンの力技でぐいぐい持っていく感じって、個人的にはサミュエル・フラーを見た時の感覚に近いのではないかと思う。またこれはあくまでも勘に過ぎないのだが、意外に監督自身が参照していたのは、結構、今村昌平あたりだったりするのではないかとも思う今日この頃。そのうち暇があったら検証してみたい。
さて六本木から九段下のイタリア文化会館に移動して『テッラ・マードレ―母なる大地』を。オルミの新作ドキュメンタリーということで楽しみにしていたのだが、九割近くがスローフードを喧伝する出来の悪いプロパンガンダ映像(たぶん他人が撮ったもの)を再編集したような代物でうんざりさせられる。ラストの一割で、ほとんど台詞のないオルミらしい静謐な映像が出て来てようやくホッとする。