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未来の巨匠たち その7

a)『何食わぬ顔』(濱口竜介)[○→]◎
『はじまり』『Friend of the Night』(濱口竜介)△
b)『記憶の香り』(濱口竜介)△
『永遠に君を愛す』(濱口竜介)[◎→]○
『何食わぬ顔』に登場するどの顔も素晴らしい。競馬場のシーンで語られる「いじめ」にまつわる思い出話は『PASSION』のあの教室のシーンの原型として興味深いし、そこでの登場人物たちの微妙な居心地の悪さを的確な切り返しで描写しているのは見事。また作家自身も役者として出ているのだが、それも悪くない(個人的には「日活ニューフェイス顔」だと思った)。終盤のモノレールのシーンの長回しの映像と音響は圧倒的だし(しかも時折インサートされるヒロインの表情が素晴らしい)、ラストの「脳内サッカー」のアイデアも面白い(そしてその直後の運動感も)。
「未来の巨匠たち」の最後を締めくくる作品として、この映画作家の最新作『永遠に君を愛す』を見れて本当によかった。「嘘」と「決断」をめぐるこの傑作は『モード家の一夜』と『三重スパイ』の映画作家への追悼のように私には思われた。終盤、ヴェールに覆われた河合青葉がわずかに目を上げるショットには心を打たれたし、ラスト直前の岡部尚と菅野莉央の切り返しには涙を禁じ得なかった。何よりも素晴らしいのは、『PASSION』にあった気取りが取れて、役者たちの演技が皆きちんと「反射」していたことだろう。今はただこの映画作家の前途を素直に祝福したい。
PASSION http://d.hatena.ne.jp/hj3s-kzu/20080529