溶岩の家/あなたの微笑みはどこに隠れたの?

hj3s-kzu2004-03-06

a)『溶岩の家』(ペドロ・コスタ
b)『映画作家ストローブ=ユイレ/あなたの微笑みはどこに隠れたの?』(ペドロ・コスタ
a) 素晴らしい。『血』は未見だが、これまで観たペドロ・コスタの作品の中では一番好きかも。『骨』以前にこんな美しい作品を撮っていたとは!
私はゾンビと歩いた!』(ジャック・ターナー)と『ストロンボリ』(ロベルト・ロッセリーニ)をネタにこの傑作について何か書こうと思っていたのだが、パンフレットの素晴らしい解説で赤坂大輔氏がすでにそのことに言及されているので止めておく。
リスボンの工事現場で事故に遭い昏睡状態となった出稼ぎ労働者レオンに故郷のカーボヴェルデ(あの偉大な歌手セザリア・エヴォラの生まれ故郷でもある)から航空券と一通の手紙が来る。そのため昏睡状態の病人に付き添ってイネス・デ・メデイロスは軍の輸送機に乗って彼の故郷の島に行き、見渡す限り何もない荒野に残される。たまたま通りかかった島民に島の反対側の病院まで連れていってもらうが、島民の誰一人としてこの病人のことについては語ろうとしない……
大都会の一流病院から僻地の設備の整っていない病院にやって来て、『メイド・イン・USA』(ジャン=リュック・ゴダール)のアンナ・カリーナよろしく、島の複雑な人間関係に分け入っていこうとする看護婦を演じるイネス・デ・メデイロスのハードボイルドな感じが素晴らしい。アンナ・カリーナがそうであったように彼女もまた事態を解決するわけではなく、一層複雑にしていくのだが。その意味ではこの作品はペドロ・コスタの敬愛するジャック・ターナーの『過去を逃れて』に近いかもしれない。ロバート・ミッチャムが主人公のあの素晴らしいフィルム・ノワールボルヘス的な迷宮のようだった。
なお、先ほどもふれたペドロ・コスタ監督特集2004のパンフはとても充実している。執筆者は蓮實重彦、ジャック・ランシエール、赤坂大輔で、冊子の真ん中にポストカード大の美しいカラースチールが綴じられている(これまでアテネで作られたパンフの中では最もオシャレなのでは)。データも詳細で、今後ペドロ・コスタについて語る際にはこれが基本文献となるだろう。
ともあれ、必見!


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b) この作品については2/12/6の日記を参照のこと。
ペドロ・コスタ監督特集2004 in Tokyo
http://www.athenee.net/culturalcenter/schedule/2004_03/pedro.html