ええ音やないか

a)『デーモンラヴァー』(オリヴィエ・アサイヤス)★★★(うち★は爆音分)


爆音初体験。上映前のBGMの時点でいやに椅子がガタガタするなあ、これが爆音かと思いきや、単に劇場の普請が悪くて通路を人が通るたびにその振動が伝わっていることに気づく。さて上映が始まり冒頭のソニック・ユースが流れた時点で「あ、心臓に悪いかも」と思ったが、要は慣れの問題で、だんだんと気持ちよくなってきて、終わったころには病みつきになる。この爆音上映を体感すると通常の映画館での上映がいかにサウンドトラックが本来持っているはずの力能を殺してしまっているかが身をもって分かるという点において真の意味で教育的である。『デーモンラヴァー』なんて以前見たときには、何てつまんない映画と思い、たぶんその実感は間違っていないのだが、爆音仕様にすると、あら不思議、これがとても面白い映画に変身してしまうのだった。アサイヤスがいかに繊細に音の演出をやっているかは、DVDで見たら全く分からないとまでは言わないが、よほど注意して聴いていないと分からないだろう。例えば「慌ただしいオフィス」という紋切り型の演出も爆音というフィルターを通してみると実にリアルなものに感じられてくる。まさに耳からウロコ。次回のガス・ヴァン・サントゴダールも楽しみ。『ドリーマーズ』も以前酷評して(id:hj3s-kzu:20040808)、Aさんに叱られた覚えがあるが、爆音によって印象がガラっと変わるかもしれんので行かねば。今度やる時はストローブ=ユイレの『モーゼとアロン』とか『今日から明日へ』とかやって欲しいっす。『労働者たち農民たち』とか『早すぎる遅すぎる』でもいいけど(アテネの音環境でストローブ=ユイレは正直ちょっと辛い)。ホラーとかポルノとかカンフーとか爆音で聴くとどうなるんだろうとバカなことを考えたりして。あ、それとバウスシアターさん、できれば上映中は非常灯を消していただけるとありがたいです。気になるので。


爆音レイト4weeks http://boid.pobox.ne.jp/contents/oose03.htm