TOKYO FILMeX2007 その4

a)『最後の木こりたち』(ユー・グァンイー)◎
ここ数年の中国のインディペンデント映画の盛り上がりから判断して、この映画は絶対に素晴しいに違いないと目をつけて行ったら、やはり傑作だった。
というわけでこの作品について書こうとした矢先の午前三時すぎ、ayaccoさん(彼女には独立電影論壇のカタログに載せるプロフィール写真を撮ってもらった。サンクス)から「『バベル』今見たんですが、笑えてしまったんですが…ギャグみたいで…私、性格悪いのでしょうか?」というメールが届き、「いや君は正しい!」ということの証明のために、先日見たイニャリトゥの短編がいかに酷かったかを書いてメールした(ちなみに私は『バベル』未見)。この映画作家には「バカ!」の一言で済まそうと思っていたのだが、せっかく書いたのでおすそわけ(一部加筆修正)。
「(略)特にイニャリトゥの作品が酷く、どういう内容かというと、映画館で若い女が『軽蔑』(ゴダール)を見ていて泣いているのだが(ただし『軽蔑』自体は画面には見えておらず、オフで聞こえるテーマ曲と台詞でそれとわかる)、彼女の隣に座っている恋人(フレーム外)が明らかにスクリーンで起きている悲劇的な出来事とは別の説明を女にし(「彼女(バルドー)は今、海に入っていったんだよ」とか)、それを聞いて女がまた涙を流すので、「これは新手のプレイか?!」と見ているこちらが思っていると、女が感極まったのか、席を立ち(ここからドアの外に出るまで、煙草を持った女の手元のアップ)、劇場の外に出てタバコを吸うのだが、実は彼女は盲目で、その後を追って出てきた恋人(ここでフレームイン)が彼女を抱きしめ、抱き合う二人の周りをキャメラがくるくる旋回しつつ、音楽がその場を盛り上げて終わるというものなのだった。めでたしめでたし(しかもワンシーン=ワンカット)」
とこんなことに時間を費やしている間にもう寝なくてはならない時間になってしまったので(風邪ひいて体調悪いし)、
『最後の木こりたち』(ユー・グァンイー)だけは絶対に見ろ!(特にB学校D科の諸君!)
とだけ言って済ませるが、「カイエ」の最新号をぱらぱらとめくっていたら、今月の初めにパリで開催された、「カイエ」一押しのフランス未公開作品を十本選んだ特集上映で、デプレシャン、青山真治といった名前に混じって、このユー・グァンイーの作品もラインナップされていたのには、さすが「カイエ」お目が高い、と感心したのだった。あまり比較対象がよくないのだが、少なくとも私にはジャ・ジャンクーの新作などより遥かに映画的興奮を覚えた。何でこの作品、ヤマガタで上映されなかったのだろう。