a)『右門廿五番手柄 七七なぞの橙[玩具フィルム]』『右門捕物帖六番手柄』(仁科熊彦)○
b)『風流活人剱[玩具フィルム]』(山中貞雄)◎/『水戸黄門 血刃の巻』(荒井良平)○
『風流活人剱』は海辺のチャンバラ場面で背後に打ち寄せる波が素晴らしかった。山中貞雄のアクション映画監督としての資質は、現存する三本の作品においては、『百万両の壷』での道場破りのシーンの固定画面の長回しや、安坊に目をつぶらせて十数えさせる間に敵を斬る素晴らしい夜道のシーン、それに『河内山宗俊』のラストの排水路の狭い空間を使った立ち回りのシーンなどに垣間見ることができるが、山中貞雄についての一般的なイメージはもしかすると抒情的な映画作家といったものかもしれない。確かにそれは決して間違いではないのだが、今回の特集で見ることのできたいくつかの貴重な断片のおかげで(残されているのが主にチャンバラ場面ということもあるが)、山中貞雄というのはやはり優れたアクション映画監督でもあったのだということが確認でき、それは山中に対するイメージの再考を迫るものであるという点で今回の特集は大いに意義のあるものだったと思う。