a)『三重スパイ』(エリック・ロメール)◎
b)『あばずれ女』(ジャック・ドワイヨン)◎
c)『罪の天使たち』(ロベール・ブレッソン)◎
罪の天使たち』は「隠れアクション映画監督」としてのブレッソン技量が冴え渡る一編で、冒頭近くの服役を終えた女性を刑務所から修道院へと安全に護送するというサスペンスフルな夜の街路のシーンから痺れる。こういったことは後年のブレッソンはだんだんやらなくなるのだが、実はこの人アメリカ映画大好きなのよね。「現代の映画作家」シリーズのブレッソン編でも、『007/ゴールドフィンガー』(まあこれはイギリス映画だが)で、キスしようとした女の瞳に映った背後の敵を007が察知して倒すシーンを嬉々として語るブレッソンの姿を見ることができるし(『シネマトグラフ覚書』からは想像もつかないだろうけど)。もしブレッソンがハリウッドに亡命していたら、それはそれで世界映画史はどえらいことになっていたのではなかろうかと、この素晴らしい長編デビュー作を見ながら妄想は膨らむ。