ブレヒトもパンクだ!

hj3s-kzu2004-04-16

仕事帰りにぶらっと本屋に立ち寄ったら、岩波文庫の新刊コーナーの前で足が止まる。何とブレヒトの『肝っ玉おっ母とその子どもたち』が出ているではないか!(翻訳はもちろん岩淵達治氏)この戯曲は彼の作品中でもベスト5に入る傑作である。未來社の『ブレヒト戯曲全集』(全8巻別巻1)をあらかた読破した人間が言うのだから間違いない。岩波からはすでに『三文オペラ』と『ガリレイの生涯』が出ているが、「叙事的」であるとはどういうことかを知るには娯楽性が微妙にブレンドされたこの作品に当たるのが最適だろう。彼の作品の中でも屈指の名作。これを読んで気に入ったら、ぜひ『屠殺場の聖ヨハンナ』『第三帝国の恐怖と悲惨』『ゼチュアンの善人』『プンティラ旦那と下男のマッティ』『アルトゥロ・ウイの興隆』『コーカサスの白墨の輪』『コミューンの日々』、それにいわゆる「教育劇」シリーズの『イエスマン ノーマン』『処置』などもぜひ!特に『処置』はストローブ=ユイレが映画化しようとしたが、遺族の許可が下りなくて断念した作品として知られる過激な実験作(また『ソポクレスのアンティーゴネ』は彼らによって映画化された『アンティゴネー』の原作)。ブレヒトにハズレなし。というわけで『全集』をすでに持っているにも拘わらず、文庫版買っちゃいました。ゴダールストローブ=ユイレの映画が好きな人がブレヒト読まないのは損だと思うよ。

他に今月の岩波ではヴァレリーの「テスト氏」が『ムッシュー・テスト』とタイトルを変えて、清水徹氏の新訳で出ていたので、これもゲット。
これからも、岩波文庫にはちくま学芸文庫に負けないようにいい仕事をしてもらいたいものです。何といっても手ごろな値段なのが有り難し。
あ、ちなみにブレヒトは小津やストローブ=ユイレと同じ位パンクな人なのです。

肝っ玉おっ母とその子どもたち (岩波文庫) 
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衛星劇場で『ラブホテル』(相米慎二)を録画したので、フレームサイズをチェックするために冒頭のシーンだけ見る。寺田農が速水典子をベッドに縛り付けてバイブで責めるシーンである。なぜここでフレームサイズをチェックする必要があるかというと、このシーンで速水典子の股間に極太の黒いバイブが挿入されるわけだが、映画館で見るとフレームのかなり端の方に彼女の腿の間からこのバイブが見えかくれするのだが、通常出回っているビデオ版だとビスタサイズにトリミングされているので、これが見えない。以前、WOWOWで放送された時もそうだった。なぜそこにこだわるかというと、このバイブは鈍いうなり声を上げてまるで生き物のように蠢いていて、それによって見悶える速水典子を見ることで、彼女を巻き添えにして自殺を決意していた寺田農が、「性=生」の底知れなさにある種の恐怖を感じて、その場を逃げ出すという物語的にもかなり重要な場面だからだ。で結果はどうかと言えば、微妙に左右が足りないような気もするが一応きちんと見えていた。エライぞ!衛星劇場