映画美学校映画祭その3

映画美学校映画祭2007より。
『日曜日のダンディー』×
『蛾意虫』×
『beautiful day』△
『電気羊の…。』×
『the beat goes on』×
『水娘』△
『森のさわさん』△
『通り魔は通りでしか人を刺さない』△
『sad girl』×
今日は『beautiful day』が見られて良かった。映画は単純であってよい、という確信に支えられた愛すべき小品。『日曜日のダンディー』は深夜ドラマとしては悪くないし、女優も魅力的に撮られている。ただ終盤のヒロイン視点によるフラッシュバックのタネあかしみたいのは、詰らないので止めた方がいい。『蛾意虫』はJホラーのクリシェの連続だし、キャスティングもよくない。それになぜ幽霊は三人なのか。ただし援交少女のふてぶてしい存在感は悪くない。『電気羊の…。』はこのぐだぐだ感がディック風味ということなのか。女優の撮り方はあいかわらず上手い。個人的には楽しめたが、これだけ依怙贔屓するのも不公平なので×とする。『the beat goes on』は作者がこのバンドを被写体に選んだ必然性が見えてこない。それは彼らの音楽の魅力を伝えるための努力を放棄しているからだ。演奏の途中で中途半端にフェードアウトせずに、一曲でもいいから最後まで聞かせてもらいたい。でないと被写体の魅力もこちらに伝わってこない。エンドクレジットが終わった後の数分間の方がよっぽど面白かった。『水娘』はこの作家の作品を初期から見続けてきた者にとって、もはや驚きはない。男が水娘を抱き締めるショットがこの作家にとっての新展開か。この作家の映画世界への入門編としてはいいかもしれない。むしろ同じ作家によるドキュメンタリー作品の『森のさわさん』の方が面白く、被写体の魅力が十分に伝わってくる。なおこれは今回の映画祭のドキュメンタリーの中では最良の作品である。『通り魔は通りでしか人を刺さない』はラストがいけない。二人の関係があの後どうなるのかが見たかった。『sad girl』は、才気走った一種のメタ映画であった前作を撮った作家にしては拍子抜けする失敗作。もっとも批評的センスには恵まれている作家ゆえ、あえて欠点を指摘するには及ぶまい。メタ映画ではなく「普通の映画」を撮ろうという志は買いたい。次回作に期待。
上映後、朝まで呑み。