Happy New Year !

f:id:hj3s-kzu:20240101073036j:image

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。 早速2023年のベストテンを。今回もあえて時流に逆らい、全て映画館で見たものに限定で。

その前に特別賞を。
オタール・イオセリアーニの全作品。
理由はここに記すまでもないだろう。

まずは新作映画ベスト。先達に敬意を表し、生年順。なおベスト候補が20本近くもあったので、今回は特例として、映画祭でしか上映されていないものは除外した。

「遺灰は語る」(パオロ・タヴィアーニ
「フェイブルマンズ」(スティーブン・スピルバーグ
「枯れ葉」(アキ・カウリスマキ
「小説家の映画」(ホン・サンス
「ザ・キラー」(デビッド・フィンチャー
インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」(ジェームズ・マンゴールド
「ショーイング・アップ」(ケリー・ライカート)
アルマゲドン・タイム ある日々の肖像」(ジェームズ・グレイ
「アステロイド・シティ」(ウェス・アンダーソン
「鯨の骨」(大江崇允)

なお、映画祭で見た新作で良かったものは「メニュー・プレジール レ・トロワグロ」(フレデリック・ワイズマン)、「エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命」(マルコ・ベロッキオ)、「アンゼルム」(ヴィム・ヴェンダース)、「水の中で」(ホン・サンス)、「白塔の光」(チャン・リュル)、「耳をかたむけて」(リュウ・ジャイン)など。

次に旧作映画ベスト。基本的に初見のものに限ったが、修復版で印象が変わったものに関しては初見扱いにした。製作年度順。

「雄呂血」(二川文太郎、1925)
「アンニー可愛や」(ウィリアム・ボーディン、1925)
「上陸㐧一歩」(島津保次郎、1932)
「青空恋をのせて」(トム・バッキンガム、1932)
「霧笛」(村田実、1934)
「幸運を!」(サッシャ・ギトリ、1935)
「月夜鴉」(井上金太郎、1939)
「女學生記」(村田武雄、1941)
「トルテュ島の遭難者たち」(ジャック・ロジエ、1976)
「ファースト・カウ」(ケリー・ライカート、2020)

ケリー・ライカートは同日に公開された二本とも素晴らしかったので、新作と旧作のベストに入れるという裏技を使った。

ベスト短編は「ブラック・アンド・タン」(ダドリー・マーフィー、1929)と「砲台のあった島 猿島」(野田真吉、1987)

コントレ賞こと新人監督賞は「犯罪者たち」のロドリゴモレノ(もっとも長編五本目のようではあるが)。

しかしパレスチナ問題に深い関心を寄せて映画作りをしていたゴダールとストローブが亡くなった途端に、ガザでの虐殺映像が現在進行形でSNSに流れてくる時代になるとは…。即時停戦を。

よいお年を!

あっという間に一年経った。今年は通常業務(大学の講義、映画祭の審査、その他チラシ原稿など)をこなしつつ、講演二本(ロジエ、モンテイロ)と原稿四本(ロジエ、ルイズ・ブルックス野田真吉、大江崇允)が立て続けに入ったので、めっちゃ忙しくて死ぬかと思った。こんなに忙しかったのはいつ以来だろうと思ったら、たぶん八年前で、その時は明らかにキャバ以上の仕事を抱えすぎた結果、交通事故に遭い、死線をさまよった(笑)。今年ももしかしたら不吉なことが起きるのではないかと、ヒヤヒヤしつつ仕事をこなしていたのだが、何事もなくこうして大晦日を迎えることができた。まあ今年の後半だけで普段の三倍は仕事をしたので、当分は仕事の依頼はないだろう(笑)。アテネで対面で講演をするのは十二年ぶり、ユーロで講演するのはたぶん初めてだと思うのだが、おかげでキノハウス全階でトークをするという偉業を達成できた(笑)。どちらも満席で、無事に客寄せパンダとしての役割を果たせてホッとしたが、客席にノーマスクの人がチラホラ見られたのが不安ではあった。皆んな映画館ではマスクしようね。今年は「吉野葛」で映画作家としてスタートして実は二十周年の節目に当たっていたので、その記念にあまり見る機会のない短編二本「火の娘たち」「韓流刑事」を期間限定で配信したのだが、皆さまお楽しみいただけましたでしょうか(後者は1/3まで公開中)。ちなみに2024年はこのブログも二十周年である。早いもんだ。

Happy New Year !

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。 早速2022年のベストテンを。今回もあえて時流に逆らい、スクリーンで見たもの限定で。

その前に特別賞を。

青山真治ジャン=リュック・ゴダールジャン=マリー・ストローブの全作品。

理由はここに記すまでもないだろう。なお、ここに吉田喜重を付け加えないのは必ずしもその全作品を肯定している訳ではないため。

まずは新作映画ベスト。先達に敬意を表し、生年順。

『クライ・マッチョ』(クリント・イーストウッド

『ウエスト・サイド・ストーリー』(スティーブン・スピルバーグ

『あなたの顔の前に』(ホン・サンス

『アネット』(レオス・カラックス

『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』(ウェス・アンダーソン

『炎のデス・ポリス』(ジョー・カーナハン

『ツガチハ日記』(ミゲル・ゴメス/モーレン・ファゼンデイロ)

『パシフィクション』(アルベルト・セラ

『みんなのヴァカンス』(ギヨーム・ブラック

『グリーン・ナイト』(デヴィッド・ロウリー)

次に旧作映画ベスト。選んだら十本では収まらなかったので、初見のものに限った。製作年度順。

ドン・カルロスのために』(ミュジドラ、1921)

『13人の女』(ジョージ・アーチェインバウド、1932)

『結婚適令記』(青山三郎、1933)

『おせん』(石田民三、1934)※断片のみ

『明日は日本晴れ』(清水宏、1948)

『こだまは呼んでいる』(本多猪四郎、1959)

『女ばかりの夜』(田中絹代、1961)

『ブラッド・ブラザース 刺馬』(張徹、1973)

『無気力症シンドローム』(キラ・ムラートワ、1989)

『語る建築家』(チョン・ジェウン、2011)

ベスト短編は『愛の果実』(アレクサンドル・ドヴジェンコ、1926)

コントレ賞こと新人監督賞は『Human Flowers of Flesh』のヘレナ・ヴィットマン(Helena Wittmann)。また奨励賞に『日本原 牛と人の大地』の黒部俊介。

よいお年を!

晦日なので一年を振り返る。春に自分の映画人生において大きな存在であった青山さんが急逝してしまったので、「中央評論」に書くつもりで準備していたカラックス論を止めて、弔い合戦のつもりで急遽、青山論を書くためにGW中ずっとホテルでカンヅメをし脱稿。おかげで原稿料の二倍もホテル代がかかった…。春学期が終わったタイミングでコロナに罹り、妻子に感染しないように細心の注意はしていたものの、やはり狭いマンション暮らし故それも無理で一家全滅。ゾンビだらけの世界では、ゾンビから身を守るよりも、ゾンビになった方が楽という妙な感慨を覚えた。高齢者や基礎疾患持ちでない限り、一週間ほどで呆気なく社会復帰できるので、双六の「一回休み」みたいなもんだなとも。ただアテネフランセでの十数年ぶりのトークは、万全を期して数日前から近くのホテルで準備していたものの、病み上がりの身体のためか、当日微熱があったために、結局ホテルからのオンライントークとなってしまったのが心残り。秋から年末にかけてはTIFFアテネの中原さんの特集に通いながら、去年の今頃は青山さんとこの辺で普通に会話してたんだよなとしんみり。青山さんの他にも年末にかけてゴダール、ストローブ、吉田喜重とやはり自分の映画的形成に強い影響を与えた映画作家たちが次々と亡くなり、現代映画の第一期の終焉をつくづく感じるとともに、彼らの新作をもう見ることが永久に叶わないのは悲しいことだが、老人ばかりに過大な期待をせずに、自分を含め、彼らより若い連中たちが新しいものを生み出すべく努力しなくてはいけないのだなどとも改めて思った。

RIP SA

f:id:hj3s-kzu:20220328160819j:image

青山真治(1964-2022)による世界映画ベストテン(2012)

素晴らしき放浪者
秘められた過去
ファウスト(1926)
ゴダールのマリア
大砂塵
キラー・エリート
ラヴ・ストリームス
殘菊物語
太陽は光り輝く
現金に手を出すな

https://www2.bfi.org.uk/films-tv-people/sightandsoundpoll2012/voter/1167

「映画は複製の喜びからできていることを私はいつも忘れずにいたいと思っている。映画の魅惑とはリアリズムにあるのではなく、いかに「リアル」を楽しむかにある。この意味で、私は映画に向き合い、映画を作り、映画について話す時、「ファウスト」を常に念頭に置いている。

私の大好きなフォード作品は毎日変わるが、今日は「太陽は光り輝く」を選びたい。それはたぶんステッピン・フェチットの声を聞きたいからだ。このリストの十本の代わりにフォードを十本選ぶこともできただろうが、そうした子供じみた振舞いは慎まなければならない。

初めて「残菊物語」を見た時、四十を過ぎた人間が人前でこんなに泣いていいものだろうかと思った。数ある溝口の傑作の中からこの作品を選んだのは、この罪悪感を償うためである。

今直面している難題を乗り越えるために、私はルノワールの「ユーモア感覚」を必要としている。「素晴しき放浪者」を選んだのはそのためだ。そして、ジャック・ベッケルの作品を見るたびに、彼を知り合いのように感じる。

『秘められた過去』ほど破壊的な映画は他にない。これを見るたびに、様々な感情が掻き立てられる。映画でこのような不確定性を達成することは、私が常に望んでいる最高の目標だが、決して到達することはできない。

『大砂塵』は、いつかリメイクしてみたい唯一の映画だが、それが不可能であることも知っている。それはおそらく私が見ることができる最悪の悪夢に最も近いだろう。この映画をリメイクしたいという私の願望が、自分の悪夢をリメイクしたいという私の歪んだ考えから来ていることは間違いない。

キラー・エリート』ほど人間の尊厳について教えてくれた映画は他にない。そんなことを言っても誰も信じないだろうが、本当だ。私はこの映画のために、小津の作品を諦めたが、その事実はペキンパーの映画に対する私の思いについて多くを語るだろう。

何故だかわからないが、キャメラの前に立つたびに、『ゴダールのマリア』のいくつかのシーンについて考える。それが何であるかはわからないが、この映画とは、何らかのつながり−−愛と憎しみを超えた−−を感じる。人生とはそのようなものだ。

カサヴェテスについて考える時、私はいつも幸福を感じる。自分が映画好きで本当に良かったと思う。私は死ぬ日まで常にそう感じると確信しており、そしてそう感じるつもりだ。『ラヴ・ストリームス』のラスト、カサヴェテスは、裸の男に変身した傍にいる犬を見て微笑む。そんな笑顔ができたらいいなと常に願って生きている。」

(訳:葛生賢)

Happy New Year !

f:id:hj3s-kzu:20220101043126j:image

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。 早速2021年のベストテンを。今回もあえて時流に逆らい、なるべくスクリーンで見たもの中心に(ヤマガタの上映作品は例外とする)。

まずは新作映画ベスト。先達に敬意を表し、生年順。

『ボストン市庁舎』(フレデリック・ワイズマン
『涙の塩』(フィリップ・ガレル
アメリカン・ユートピア』(スパイク・リー
『水を抱く女』(クリスティアン・ペッツォルト
『ドント・ルック・アップ』(アダム・マッケイ)
『ビーチ・バム まじめに不真面目』(ハーモニー・コリン
『ホイッスラーズ 誓いの口笛』(コルネリュ・ポルンボイュ)
『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ』(ラドゥ・ジューデ)
『発見の年』(ルイス・ロペスカラスコ
『見上げた空に何が見える?』(アレクサンドレ・コベリゼ)

次に旧作映画ベスト。製作年度順。

『ウーマン』(モーリス・ターナー、1918)
『曠野に叫ぶ』(キング・ヴィダー、1921)
『予審』(ローベルト・ジーオトマク、1931)
『脱走者』(フセヴォロド・プドフキン、1933)
『朧夜の女』(五所平之助、1936)
『十字路』(沈西苓、1937)
『新しい人生』(パウロ・ローシャ、1965)
『赤い夜』(ジョルジュ・フランジュ、1974)
『魔法使いのおじいさん』(ゴーヴィンダン・アラヴィンダン、1979)
『男子ダブルス』(ジャン=フランソワ・ステヴナン、1986)

コントレ賞こと新人監督賞はアレクサンドレ・コベリゼにするつもりだったのだが、ベストの方に入れてしまったので、該当者なし。