豊田四郎を見た帰りに映画美学校に立ち寄り、映写室の窓から筒井さんの処女作『レディメイド』の後半30分ほどを拝見させていただく。8ミリ全盛の当時に、最初の作品をモノクロ・16ミリ・シネスコ(!)で構想するという発想は、凡人には思いもつかず、それだけでも恐れ入るが、ご本人も認めるごとく演出スタイルは現在とそれほど変わっていない、ということはすでに初手から堂に入ったキャメラワークなり編集センスなのだった。映画自体はルネ・クレール(あるいは山中貞雄)からヒッチコックを経由した物語に、オーソン・ウェルズ的なクライマックス(鏡の間!)をアラン・レネ的な編集で纏めたものと言ったら良いだろうか。『オーバードライヴ』がそうであったように遊び心満載の作品だった。これを弱冠24歳で撮ったというのだから吃驚。帰りに筒井さんと映画美学校の映写技師二人と一緒に呑む。あれを撮るには相当数の映画を見ていたはずだと思い、当時年間何本位映画を見ていたんですかと質問すると、「千本(TV、ビデオを除く)」と即答。流石。ご馳走様でした。


a) 『甘い汗』(豊田四郎)★★★