映画美学校映画祭2007その4

映画美学校映画祭2007より。
『ロボット犬アイボの「生」と「死」』×
『島影』△
『メイド イン J』×
『桃祭07』については以前書いたのでそちらを参照のこと(id:hj3s-kzu:20070304)。『ロボット犬アイボの「生」と「死」』は突っ込みが足りない。例えば、この作品に出てくるアイボに入れ揚げた挙げ句、家庭崩壊に到った人など、もっと取材した方が面白いと思うのだが。『島影』は被写体たちが魅力的に撮られているだけに、作者の自分語りの方向に回収されてしまうのが惜しい。また台風の時のイメージショットみたいのもいらないし、最後の献辞も止めた方がいい。『メイド イン J』は今回の映画祭中、最も憤りを憶えた作品。それは別に私が左寄りだからとかそういう理由では全くなく(実際、左寄りですけど)、純粋に映画的な理由である。ここで老人たちが表明する思想には全く同意できないが、しかし彼らのような人たちが未だに存在することには興味と驚きを覚えた。この素材を活かすには、この三部構成の映画の第二部は不要だと思うし(被写体への距離感が前後のパートと違うゆえに、対位法として機能していないし、焦点がぼやける)、プロローグ、エピローグの作者の自分語りもいらない。また終盤に出てくる茶番劇は最低。端的に言って、作者はあの老人たちを裏切っている。被写体に批判的な距離をとるのは構わないが、茶化すのは不誠実だ。被写体への敬意に欠けた人間にドキュメンタリーを撮る資格はない。ついでに言うと、この主題を扱うに際し、天皇制イデオロギーへの視点が欠落しているのは致命的だと思う。選曲も最悪。
a)『狂気の海』(高橋洋)△
ワシントンD.C.に向けられた核ミサイルはあの後どうなったのだろう(さらに言えば、ミサイルがレーザー光線をわずかにかわして飛んでいくギリギリ感が欲しい)。つかみが素晴らしいのに、ラストが予定調和なのが実にもったいない。地下の帝国より、地上の地獄が見たかった。そしてアメリカの攻撃からいかに「霊的防衛」するのかを。前半の『悪徳』(アルドリッチ)のような室内劇や、中盤の見せ場も良いだけにかえすがえす残念。ただし二人のヒロインは素晴らしかった。特に中原翔子は今後この作品が代表作になるのでは。
上映後、釈然としないまま呑んでいて、終電を逃し、一駅分歩く。