時間の終り

前日、家に帰れたのが午前三時を過ぎていたので、夕方のろのろと家を出て、森美術館の「杉本博司 時間の終り」展の最終日にすべり込む。会場で偶然Yくんに出くわす。「海景」シリーズは以前、直島の現代美術館(海もきれいでとってもよい。ああ、また行きたい…)で見たことがあったのだが、今回、彼の仕事の全貌に接して、改めて凄い写真家だと思った。モノクロ35mmフィルムの表現能力をとことんまで引き出している。「ジオラマ」や「ポートレイト」のシリーズなどは、グリフィス、ホークス、ゴダールストローブ=ユイレといった映画作家たちの作品のように見るものを刺激しまくる。雪原を歩く一組の類人猿の写真を見た時の衝撃といったら!厳密に考え抜かれた構図と光によって、あたかも仮死状態であったかのごとく、自然史博物館の剥製たちは再び生命を吹き込まれる。永遠の静止でしかなかったものが、あたかも「決定的瞬間」に変わるのだ。同じチケットで展望台も入れるというので、話のタネに行ってみる。東京タワーというのは仰角で見るものだとばかり思っていたが、ここだと俯瞰で見れる。帰りに近くの和民でYくんと呑む。