a)『次郎長三国志 第三部('64・東映)』(マキノ雅弘)★★★★
b)『次郎長三国志 甲州路殴込み('65・東映)』(マキノ雅弘)★★★★
c)『人生なんて怖くない』(ノエミ・ルヴォヴスキ)★★★
d)『プロビデンス』(アラン・レネ)★★
朝イチで昨日の東映版『次郎長三国志』の続きを見に行き、『甲州路殴込み』に到ってはもう泣きに泣いてしまって映画館を出た後しばらく頭がぼーっとしてしまった。世間的には東宝版が名高く、こちらの方は何度か見ていたのだが、東映版の方はマキノ自身も『映画渡世』で「リピート」「焼き直し」「安いシャシン」としてあっさり片付けていたので迂闊にもこれまで見逃していたのだけれど*1東映版の方も素晴らしいと声を大にして言いたい。第一部と第二部はおそらく一緒に撮られたのではないかと思うが、第三部と『甲州路殴込み』の間にはそれぞれ一年の開きがあるためか、たぶん役者のスケジュールの都合が会わなかったのだろう、第三部では大木実が、『甲州路殴込み』では水島道太郎、松方弘樹津川雅彦丘さとみらメインのキャストが他の役者と交代していて、しかも前回までのあらすじを説明する場面では御丁寧に交代した役者でそっくり再演してくれるものだから、連続してみると強烈な違和感がある(しかも『甲州路殴込み』ではまた大木実が復活する!)。また『甲州路殴込み』では撮影が前三作の三木滋人から山岸長樹になり撮影コンセプトががらっと変わるのも続けて見ると吃驚(前者が割と広い画で人物を自由に動き回らせるのに対し、後者がもっと人物に寄った画になっている。ただ物語的にはそれまでのコミカルな感じから一転して悲愴な感じになるので、演出的には正しい選択かも)。もっともこういうマキノの大らかさは結構好きだったりして。
さて話は変わるが、最近出た映画についての注目すべき書物である和田伸一郎の『メディアと倫理 画面は慈悲なき世界を救済できるか』についての書評をDAさんが書いているので要チェック。*2とりあえず現代映画についての章だけ読んだが、かなり興味深い本。またDAさんの書評では、ロジエVSピアラという現代フランス映画を考える上で重要な論点が提示されていて、とても参考になる(おかげでなぜ自分がピアラの映画を嫌いなのか分かった)。またここで言及されているユセフ・イシャグプールの『ル・シネマ』はとてもいい本なので、映画に興味のある人は皆読んだ方がいいと思う(翻訳に若干問題あるけど)。

*1:もっともマキノのフィルモグラフィーってリメイクばっかりなんだけどね。

*2:http://www.ncncine.com/ncncinetc1.html