冬宴@京橋

a)「冬宴@京橋」より
『みえない水』(加地耕三)
『あはは おほほ』(田村一郎)
『無限の自由』(矢後智之)
『人間の街』(嶺隼樹)
『なななのか』(常岡弦)
『アカイヒト』(遠山智子
『さらば、愛しき女よ』(長島良江)
『ついのすみか』(井川耕一郎)
『綱渡り』(小出豊)
『お城が見える』(小出豊)

久々に再見した井川さんの『ついのすみか』の志の高さに感銘を受ける。やはり80年代は自主映画の爛熟期であったのだなあ(今どき23才でこれだけのもの撮れる人がいたら教えてほしい)。なので今日は★はつけません。『綱渡り』も昔見た時よりも良かった(何で当時もっと評判にならなかったんだろう?)。『アカイヒト』以降の作品については、宣伝用に書いた紹介文を以下に残しておくのでご参照あれ。

今月の「ユリイカ」で「監督系女子」という特集が組まれていますが、それが片手落ちであることは『アカイヒト』を見れば明らかでしょう。というのも私見ではこの作品を撮った遠山智子は現在の日本で最も才能豊かな女性映画作家だからです。『集い』に始まる彼女の作品は、東欧あたりの映画作家が間違って日本語で撮っているような独特の映画的時空間を構築しており、どれも凄いものですが、とりわけこの『アカイヒト』は圧倒的な画面の強度で一時間見せてしまう傑作です。画面を見ている限りではとても日本で撮られたとは思えない風景なのですが、彼女がキャメラで切り取ることで日常的な空間が異質なものに変容してしまうのです(『巣』のモヤイ像は衝撃でした)。
『さらば、愛しき女よ』は今年の映画美学校映画祭で上映されたものの中で最も素晴らしかったうちの一本で、荒々しいカットつなぎと女心にハッとさせられました。今回は整音され直したヴァージョンでの上映らしいので、私も楽しみです。
『ついのすみか』は映画美学校で講師を勤めている井川耕一郎が20年ほど前に撮った8ミリ映画(今回はVHSでの上映)で、近年の『寝耳に水』や『西みがき』の原型であるような作品です。密室で展開される恋人たちの戯れに纏いつく狂気すれすれの不安感は見る者も窒息させずにはおきません。
『綱渡り』は7年くらい前に一度見たきりですが、主人公の小学生が引きずるその小さな身体に不釣り合いな長い傘の先がコンクリートに擦れて立てる音や、彼が乗るバスの後部座席に同乗する「裸の大将」のような風貌のランニングシャツの少年の姿は今でも鮮明に記憶に残っています。
急遽追加上映が決まった『お城が見える』は先に行われた「十善戒」上映会で、万田邦敏をして「傑作」と言わしめた作品だと述べれば充分でしょう。