ちょっと振り向いてみただけの…

hj3s-kzu2004-10-12

a)『夏の嵐』(ルキノ・ヴィスコンティ
b)『疲れ切った魔女』(ルキノ・ヴィスコンティ
c)『異邦人』(ルキノ・ヴィスコンティ
c) カミュの『異邦人』といえば、カフカの『変身』と並んで、かつては中高生が夏休みに読む本の定番だったわけだが、今どきの中高生もそうなのだろうか。カフカは今でも好きな作家の一人だが、カミュはその後、『シーシュポスの神話』を読んだ位で、この『異邦人』も二十年前の夏以来読み返していない。で今日、この作品を見て、内容をきれいさっぱり忘れていたことが分かった。「不条理」だの「実存」だのを抜きにしても十分、通俗的で面白い。取調室で殺人を犯したムルソーマルチェロ・マストロヤンニ)に、まるで吸血鬼を前にしたヘルシング教授のように物凄く大きな十字架をかざして、お前はこれを知っているか、と尋ねる場面は、マストロヤンニが平然としているだけに、とても喜劇的である。彼の恋人役にアンナ・カリーナ。彼女が主演している映画としては、60年代ゴダールの他は『修道女』(リヴェット)、それに『アンナ』(駄作だが、彼女が「太陽の真下で」を唄うところだけはゲンズブールの楽曲の素晴らしさと相俟って泣ける)くらいしか記憶にないが(あとは三十過ぎてから、傑作『シナのルーレット』(ファスビンダー)ね)、それらの作品のイメージに比べると、この作品の彼女はもっと野性味あふれるいい女という感じである。『気狂いピエロ』(ゴダール)の海辺での彼女のイメージをもしかしたらヴィスコンティは踏まえているのかも。海水浴のシーンでの黒のワンピースの水着姿の彼女も眩しいくらい美しいが、ここだけの話、彼女、美しい裸身をさらしている。ヴィスコンティのファンのみならず、アンナ・カリーナのファンは必見。渋谷あたりでリバイバル公開すれば絶対当たると思うけど。
ルキーノ・ヴィスコンティ DVD-BOX 3枚組 ( 揺れる大地 / 夏の嵐 / 家族の肖像 )